本文へスキップ

大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学 (Department of Comprehensive Kidney Disease Research, Osaka University Graduate School of Medicine)

TEL. 06-6879-3747

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2 バイオ棟6階 E60-01

「保存期慢性腎臓病患者の心血管合併症に対するクレメジン®/マグラックス®投与の有用性評価」研究

研究の目的

 粥状動脈硬化は、動脈壁にコレステロールなどが沈着し、血管が細くなって血流が悪化する病気です。粥状動脈硬化が心疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾患を引き起こすことはよく知られており、粥状動脈硬化に対するさまざまな治療方法がこれまで開発されてきました。
 近年、粥状動脈硬化とならび「血管石灰化」が心疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾患を誘発する因子として注目を集めています。「血管石灰化」は、文字通り石灰沈着により血管が硬くなる病気です。血管石灰化は、糖尿病患者さんや腎機能障害患者さんに多く認められ、腎機能障害を伴った糖尿病患者さんでは特に高頻度に発症することが知られています。現在、血管石灰化に対する治療法の開発が試みられていますが、未だ確立された治療法はなく、新規治療法の確立が求められています。
 クレメジンⓇは、進行性腎障害の治療薬として1991年に発売された歴史のある薬で、安全性が確立されています。クレメジンⓇは特殊な活性炭でできており、腎機能障害により体外に排泄できなくなった毒素(尿毒症物質)を腸管内で吸着し便に排泄することで、尿毒症物質による諸症状(口臭・嘔気・かゆみなど)を抑える効果があります。近年、クレメジンⓇが上記諸症状を抑制するだけではなく、血管石灰化も抑制することが動物実験で示されました。しかし、クレメジンⓇが人の血管石灰化を抑制できるかどうかは、現在のところ分かっていません。そこで本研究では、「クレメジンⓇが人の血管石灰化を抑制し、心疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾患発症を抑制するか」明らかにしたいと考えています。
 マグネシウムは、体の構成や維持に必要な微量元素です。特に、糖尿病患者さんでは尿に排泄されるマグネシウム量が多くなり、血液中のマグネシウム濃度が低めになります。血液のマグネシウム濃度が低い方に血管石灰化や心血管病の発症が多いことが知られていますが、マグネシウムを内服することで血管石灰化が抑制されるかどうかは分かっていません。そこで本研究では、「マグネシウムが人の血管石灰化を抑制し、心疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾患発症を抑制するか」についても明らかにしたいと考えています。マグネシウムの補充はマグネシウムを含む胃薬・便秘薬(マグラックスⓇ)の内服にて行っていただきます。
 また本研究では、通常診療で採取させていただいた血液・尿検体の残余部分を使用させていただき、血管石灰化の進行と関連する新たな検査値異常(バイオマーカー)の探索を行います。
 本研究によって新たなバイオマーカーが確立され、クレメジンⓇやマグネシウムの補充が人の血管石灰化を抑制し心疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾患発症を抑制することが明らかになれば、糖尿病患者さん・腎機能障害患者さんの今後の治療に大いに役立つと考えています。

研究の方法

 保存期慢性腎臓病の患者さんのうち1) 糖尿病のある方、2) 心血管疾患の既往のある方、3) 高LDL血症のある₍悪玉コレステロールが高い₎方または高LDL血症に対する治療薬を内服中の方、4)現在喫煙されている方、に本研究への参加をお願いしています。この研究は2012年10月から2017年8月末までおこなわれます。250人の患者さんに参加して頂く予定です。研究に参加頂く期間は、本研究への参加同意を頂いた時点から2年間です。本研究に参加して頂ける患者さんの新規募集は2014年12月まで続ける予定です。
 本研究に参加して頂ける方には、研究への参加同意を頂いた時に、無作為に「クレメジンⓇを内服する方(クレメジンⓇ内服群)」と「クレメジンⓇを内服しない方(クレメジンⓇ非内服群)」に分かれて頂きます。また、それぞれの群で、「必要に応じてマグラックスⓇを内服する方(マグネシウム補充群)」と「マグラックスⓇを内服しない方(マグネシウム非補充群)」に分かれて頂きます。クレメジンⓇ内服群やマグラックスⓇ内服群の方には、研究期間の2年間、クレメジンⓇの内服を続けて頂きます。なお、クレメジンⓇとマグラックスⓇ内服以外の治療の選択に関しては、主治医と患者さんに一任されており、本研究により影響を受けることはありません。
 クレメジンⓇやマグラックスⓇ内服の有無に関係なく、本研究に参加頂く方全員に、CT検査と尿検査を受けていただくようお願いしています。また、通常診療で行う血液検査の残りを、動脈硬化に関する検査の測定に使用させて頂きます。CT検査は「本研究への同意時点」と「同意から2年後(もしくは透析導入された場合は透析導入時)」の2回行い、心臓の血管を撮影して石灰化の状態を評価します。CT検査は内田クリニック(阪大病院北東隣)でうけていただきます。なお、CT撮影時に造影剤は使用しませんが、画像の”ぶれ”を少なくするために、必要に応じて心拍を遅くする薬(セロケン®錠もしくはセロケン®L錠)を内服していただきます。CT検査1回の被曝量は約2~3mSvで、人間ドックなどの胃透視の検査と同程度です(参考までに、自然放射線による平均年間被曝量は、1.4mSv(日本)、2.4mSv(世界)です)。血液・尿検査では、血管石灰化に関わる因子の評価を行います。本研究の血液検査は、通常の診療において診断に使われた検査検体の残りを使わせて頂きますので、本研究のために別途追加の採血が必要になることはありません。また、本研究の血液検査は血球成分を含まない血清・血漿と呼ばれる部分のみを使用します。尿検査については、通常の検査時に本研究用に余分に提出して頂くことがあります。
 その他、通常の保険診療で行われた検査結果(血液・尿検査の数値データなど)や、心疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾患の発症有無などを調査するため、診療録(カルテ)を閲覧させていただきます。

本研究に参加することによって予想される利益と不利益

 本研究で行われる検査の結果は、その後の診療に活かされます。たとえばCTの検査で心臓にひどい血管石灰化が見つかった場合は、症状がなくても通常診療として心臓の精査を受けていただき、必要に応じて通常診療として治療を受けて頂くことができます。特にこの研究で対象としている糖尿病や心血管疾患の既往、高LDL血症を持つ患者さんや喫煙されている方は高度の血管石灰化が予想されますので、冠動脈石灰化の程度を評価し、将来心臓病にかかるリスクを把握しておくことは非常に重要です。これまでに、同様の検査を行って、無症状の心臓病を早期に診断し治療することができた例を経験しています。
 どのようなお薬にも副作用があります。クレメジンⓇの主な副作用として便秘・腹部膨満感があります。クレメジンⓇ内服群でこのような症状に気づいた方は、担当医に相談してください。副作用によってはクレメジンⓇの内服を中止することもあります。また、クレメジンⓇ非内服群の方についても、研究期間中に尿毒症症状が出現するなど、クレメジンⓇを内服した方がよいと主治医が判断した場合は、クレメジンⓇの内服を開始する場合があります。また、マグラックスⓇの主な副作用として、高マグネシウム血症、下痢があります。腎障害のある患者さんでは、高マグネシウム血症を起こすおそれがあることより、添付文書で慎重投与するよう記載されており、本研究では、血液中のマグネシウム濃度が高くなりすぎないように、血液中の濃度を定期的に測定して、慎重に投与量を調整します。マグラックスⓇ内服群で下痢のひどい方は、担当医に相談してください。副作用によっては、内服を中止します。CT検査前に内服するセロケン®錠もしくはセロケン®L錠にも、徐脈やめまいなどが生じる可能性があるため、患者さんの状態に応じて主治医が投与の必要性を判断し、投与量を決定します。
 本研究は腎臓病診療で一般的に使用されている薬、また心臓の血管石灰化評価にも一般的に使われているCT検査を用いており、特別な補償はありません。
 本研究に係るCT検査やセロケン®錠およびセロケン®L錠、保険が適用されない特殊な血液検査・尿検査などは、腎臓内科の研究費および田辺三菱製薬(株)の協力により行われます。研究にご協力頂いても、謝礼や交通費などの支給はなく、研究以外の検査や治療については、通常通り保険診療で行います。また、クレメジンⓇやマグラックスⓇ使用群の方のクレメジンⓇやマグラックスⓇの代金については、通常の保険診療での支払いが生じます。
 なお、この研究により特許権など知的財産権が生じた場合、その権利は研究機関や研究遂行者等に属し、患者さん個人には属しません。

個人情報の保護

 学会や論文等で、あなたを含む多くの方の検査結果に基づいた研究成果を発表することがあり、最終的な研究成果については大阪大学腎臓内科のホームページ上でも閲覧することができるようになる予定です。あなたの個人情報は担当医師と大阪大学における研究管理者以外の目にふれることはなく、上記発表において検査を受けられた方の名前や身元などプライバシーが外部に漏れることはありません。提供いただいた血清および尿は、患者さんの名前ではなく個別の番号を付けたチューブで冷凍保管します。このため、別の鍵付き保管庫に保存してある対応表を見なければ、冷凍保管してある血液・尿が誰のものであるか分からないようになっています。なお、提供いただいた血液・尿検体の保存期間は特に限定いたしません。また、本研究の過程で特殊な検討などが必要になった場合は、他の研究機関で詳しい解析を行う可能性がありますが、その際も血液・尿は名前ではなく番号で管理され、他機関の関係者が、誰の血液・尿であるか知ることはありません。

研究計画及び研究方法の開示

 あなた自身や、あなたが指定された人が希望された場合、他の被験者の個人情報保護や当研究の独創性確保に支障がない範囲内で、本研究の計画および方法についての資料を提供いたします。本研究の計画・方法に関する資料の入手・閲覧をご希望の際は、本文書末尾に記載されている「問い合わせ先」までご連絡ください。

ご協力のお願い

 当院は大学病院であり、患者さんの治療は当然ながら、医学の発展に貢献するという社会的使命も担っております。本研究の内容をご理解頂き、是非ご協力くださいますようお願い申し上げます。
 しかし、ご協力いただけるかどうかは、患者さんの自由意思で決めていただくことになっています。ご協力いただけないからといって、当院での今後の診療においてあなたが不利益を被ることは一切ありません。また、本研究へのご協力に一旦同意された後でも、同意を取り消すことができます。この場合も、取り消された後の診療において不利益を被ることは一切ありません。同意を取り消され、保存血液・尿の廃棄を希望された場合は、所定の処理要項に従って保存血液・尿を処分しますが、すでに得ている研究データは使用させていただきます。納得していただけましたら同意書に署名をお願いします。
 なお、本研究の内容は大阪大学医学部附属病院の倫理審査委員会で審査を受け、医学的・倫理的に適切であり、患者さんの人権が守られていることから、その実行が承認されたものです。

お問い合わせ先

 本研究に関する質問がございましたら、下記までご連絡下さい。
連絡先:〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2 大阪大学医学部附属病院 腎臓内科
Tel & Fax: 06-6879-3857
研究責任者:猪阪 善隆 (病院教授)
担当医師:中野 智香子 (医員)、濱野 高行(寄附講座准教授)、松井 功 (助教)
     北村 温美(助教)、小尾 佳嗣(医員)、坂口 悠介(医員)


ナビゲーション

バナースペース

大阪大学大学院医学系研究科
腎疾患統合医療学

Department of Comprehensive Kidney Disease Research,
Osaka University Graduate School of Medicine

〒565-0871
大阪府吹田市山田丘2-2
バイオ棟6階 E60-01
TEL 06-6879-3747
FAX 06-6879-3746

2-2, Yamada-oka, Suita, Osaka, 565-0871, Japan
TEL +81-6-6879-3747
FAX +81-6-6879-3746

大阪大学 
大阪大学大学院医学系研究科
大阪大学医学部附属病院
大阪大学 腎臓内科
大阪大学 老年・総合内科学